「鋼の錬金術師」、通称ハガレン。荒川弘先生による原作漫画は、少年漫画の枠を超えた重厚なストーリーと魅力的なキャラクターで社会現象とも言えるほどの絶大な人気を誇り、2003年と2009年の二度にわたりアニメ化されました。特に2003年に放送が開始された最初のアニメ版(通称:旧ハガレン、無印ハガレンとも)は、当時まだ原作が連載中であったことから、物語中盤以降はアニメ独自のオリジナルストーリーが展開されました。この独自路線は、時に原作ファンを驚かせ、時に新たなファンを獲得し、放送終了から長い年月が経った今なお、多くの人々の記憶に残り、熱く語り継がれる不朽の名作となっています。そのダークでシリアスな雰囲気、そして衝撃的な結末は、後のアニメ作品にも影響を与えたと言われています。
この記事では、そんな旧ハガレン(2003年版)が持つ唯一無二の魅力、特に多くの視聴者に衝撃を与え、「旧ハガレンといえば」と語られることの多い「エドの死」の真相に迫ります。さらに、物語の根幹をなすあらすじ、作品世界を彩る登場キャラクターと豪華声優陣、原作とは異なる道を歩んだオリジナルストーリーの詳細、作品を盛り上げた珠玉の主題歌、そして賛否両論を巻き起こした最終回について、より深く、詳しく解説していきます。旧ハガレンをこれから観る方、久しぶりに内容を思い出したい方、原作やFA版との違いを知りたい方、必見です。
旧ハガレン エド 死亡
旧ハガレンについてインターネットで検索すると、必ずと言っていいほど目にするのが「エド 死亡」という衝撃的なキーワードです。原作漫画や、後に制作された原作準拠のアニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」(FA)の結末を知っているファンにとっては、「あのエドが死ぬはずがない」と信じがたい内容かもしれません。しかし、これは単なる噂や都市伝説ではありません。結論から明確に述べると、旧ハガレン(2003年版)のアニメ最終盤、第51話において、主人公エドワード・エルリックは一度、明確に死亡します。 この展開は、当時の視聴者に大きな衝撃と悲しみを与え、旧ハガレンを語る上で欠かせない要素となりました。
エドはなぜ、どのように死亡したのか? 物語の背景
物語のクライマックス、国家を揺るがす陰謀の中心地であるセントラル司令部の地下深く。そこでエドは、積年の宿敵であるホムンクルス・エンヴィーと対峙します。エンヴィーは、旧ハガレンのオリジナル設定において、エルリック兄弟の父であるヴァン・ホーエンハイムが、かつて愛した女性ダンテ(本作の黒幕)との間にできた子供を人体錬成しようとして失敗し、その結果生まれた存在。つまり、エドにとっては異父兄弟とも言える、複雑で深い因縁を持つ相手でした。激しい戦いの末、エドはエンヴィーの不意打ちを受け、その胸を容赦なく貫かれてしまいます。最強のホムンクルスの一人であり、変身能力で相手を翻弄するエンヴィーの手にかかり、エドは一度、その短い生涯に幕を閉じるのです。主人公の死という、少年向け作品としては極めて異例かつショッキングな最期でした。
死亡したエドはどうなった? 兄弟の絆と代償
兄エドワードの亡骸を目の当たりにした弟アルフォンス・エルリックは、悲しみと絶望の淵に立たされます。しかし、彼は諦めませんでした。兄を失った世界で生きることを拒絶し、最後の望みを託して、人体錬成のタブーに再び挑むことを決意します。アルは、自身の魂全てと、それまで集めてきた賢者の石(不完全なもの)のエネルギーを代価として、「門」の向こう側にあった兄エドワードの肉体と魂を錬成。奇跡的にエドをこの世に生き返らせることに成功します。しかし、錬金術の原則である「等価交換」は絶対です。兄の命を錬成するという偉業の代償として、アルフォンス自身の魂と鎧の身体は完全に消滅してしまうのでした。
アルフォンスの犠牲によって蘇生したエド。しかし、目の前には弟を失ったという耐え難い現実が広がっていました。弟を取り戻すことこそが旅の最大の目的であったエドは、迷うことなく、再び禁忌の人体錬成を敢行します。今度は自身が代価を支払う番でした。エドは自身の「通行料」として、錬金術師としての力の源泉である「門」そのもの、これまでの旅で得た錬金術の知識と能力、そして旅の記憶の一部という、計り知れないほど大きな代価を捧げます。その結果、アルフォンスの魂と、人体錬成を行った時点の年齢(10歳相当)の肉体を現世に再構築することに成功します。しかし、支払った代償はそれだけではありませんでした。等価交換の法則により、エド自身は錬金術が存在しない別の世界、すなわち「門」の向こう側にある我々の現実世界(具体的には1923年のドイツ・ミュンヘン)へと飛ばされてしまうのです。
つまり、旧ハガレンにおける「エドの死」の顛末を整理すると、①エンヴィーによって殺害される、②アルの魂と引き換えに蘇生する、③アルを蘇生させる代償として異世界(現実世界)へ飛ばされる、という流れになります。元の世界に戻る術はなく、兄弟は再び離れ離れになってしまう。この非常にビターで切ない結末は、旧ハガレンの物語が、安易なハッピーエンドを許さない厳しい世界観に基づいていることを象徴しています。そして、このアニメ最終回の結末は、物語の完全な終わりではなく、その後のエドとアルの運命を描く劇場版「鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」へと直接的に繋がっていく重要な布石となるのです。

あらすじ
兄弟の旅の始まりと深まる謎
物語の舞台は、錬金術が科学として発達した軍事国家アメストリス。この国に、エドワードとアルフォンスという二人の才能ある兄弟が暮らしていました。幼くして錬金術の才能を開花させた彼らでしたが、最愛の母親トリシャを病で亡くし、深い悲しみに暮れます。母にもう一度会いたい一心で、兄弟は錬金術最大の禁忌とされる「人体錬成」に手を出してしまいます。しかし、命を創り出すという神への挑戦は無惨にも失敗。「等価交換」の原則に基づき、錬成は兄弟から非情な代償を奪い去ります。兄エドワードは左脚を、弟アルフォンスは自身の肉体の全てを失ってしまうのです。
絶望的な状況の中、エドワードは最後の力を振り絞り、自身の右腕をさらなる代価として、かろうじてアルフォンスの魂だけをその場にあった古い鎧に定着させることに成功します。しかし、それは仮初めの身体。失った弟の身体と自身の右腕と左脚を取り戻すため、兄弟は「賢者の石」と呼ばれる、等価交換の原則を無視して絶大な力を引き出すとされる幻の術法増幅器を探すことを決意し、故郷を後にして旅立ちます。
兄エドワードは、移動の自由や特権を得るために国家錬金術師の資格を取得。「鋼」の二つ名を授かり、軍の一員として活動しながら、各地で賢者の石の手がかりを探し求めます。旅の途中、彼らは心優しい人々との出会いや、錬金術が引き起こす悲劇、そして国家の暗部を目の当たりにします。リオールの街での宗教詐欺事件、ショウ・タッカーの非道な研究、第五研究所の隠された秘密。これらの出来事を通して、兄弟は「賢者の石」の材料が生きた人間であるというおぞましい真実や、その石を巡る軍上層部の陰謀、そして「ホムンクルス」と呼ばれる、人間ではない謎の存在たちの暗躍を知ることになります。失ったものを取り戻すという個人的な目的から始まった旅は、やがて国家全体を巻き込む巨大な陰謀との戦いへと発展していくのです。旧ハガレンは、兄弟の成長と絆、そして命の価値を問いかける、重厚な物語が展開されます。
登場キャラ:声優
旧ハガレンの世界を生き生きと描き出したのは、魅力的なキャラクターたちと、彼らに魂を吹き込んだ実力派声優陣の熱演でした。ここでは主要なキャラクターとその担当声優をご紹介します。彼らの声があったからこそ、旧ハガレンは多くの人々の心に深く刻まれました。
魂を吹き込む声の錬金術師たち
エドワード・エルリック(声優:朴璐美)
本作の主人公。「鋼」の二つ名を持つ、史上最年少で国家錬金術師となった天才少年。12歳(物語開始時)。失った弟の身体を取り戻すという強い決意を胸に、賢者の石を探す旅を続ける。身長が低いことを非常に気にしており、「チビ」「豆」といった言葉に過剰反応する。短気で口は悪いが、根は非常に優しく、弟アルフォンスを何よりも大切に想う強い正義感の持ち主。朴璐美さんの魂のこもった叫びや、年相応の少年らしい演技は、エドの多面的な魅力を完璧に表現しています。
アルフォンス・エルリック(声優:釘宮理恵)
エドワードの最愛の弟。11歳(物語開始時)。人体錬成の失敗により肉体の全てを失い、魂だけが巨大な鎧に定着させられている。そのため、食事も睡眠もとれず、感覚もほとんどない。心優しい穏やかな性格で、直情的な兄エドワードの良きストッパー役でもある。鎧の威圧的な外見とは裏腹に、猫好きで子供らしい純粋さを持つ。釘宮理恵さんの、鎧の中から響くような、それでいて感情豊かな声は、アルの悲しみや優しさ、そして内に秘めた強さを見事に表現し、多くの視聴者の涙を誘いました。
ウィンリィ・ロックベル(声優:豊口めぐみ)
エルリック兄弟の故郷リゼンブールに住む幼馴染であり、エドワードの右腕と左脚の機械鎧(オートメイル)を製作・整備する優秀な機械鎧技師。両親を早くに亡くしており、祖母ピナコと共に暮らしている。兄弟にとっては、家族同然のかけがえのない存在であり、彼らの精神的な支えとなっている。機械いじりが大好きで、男勝りな性格だが、根は優しく涙もろい一面も。豊口めぐみさんの快活で愛情深い演技が、ウィンリィの魅力を引き立てています。
ロイ・マスタング(声優:大川透)
「焔」の二つ名を持つ国家錬金術師で、階級は大佐。発火布を用いた錬金術で炎を自在に操る。エルリック兄弟を国家錬金術師の道へと導いた人物であり、後見人的な存在。一見すると野心家で、女性好きの飄々とした人物に見えるが、その内には国を変えたいという強い意志と、部下を守るという熱い情を秘めている。目的のためには手段を選ばない冷徹さも併せ持つ。大川透さんの、知的で色気のある、時に厳しい声が、マスタングの複雑なキャラクター性を見事に体現しています。
リザ・ホークアイ(声優:根谷美智子)
マスタング大佐の側近であり、最も信頼する部下。階級は中尉。「鷹の目(ホークアイ)」の異名を持つ狙撃の名手。常に冷静沈着で感情を表に出すことは少ないが、マスタングへの忠誠心は絶対であり、彼の「背中」を守ることを誓っている。マスタングの理想と弱さを理解し、公私にわたって彼を支える。根谷美智子さんの、クールでありながらも芯の強さを感じさせる演技が光ります。
ホムンクルスたち - 人ならざる者たちの悲哀
旧ハガレンにおけるホムンクルスは、原作とは異なり「人体錬成の失敗によって生まれた存在」という設定が大きな特徴です。彼らは、錬成された元の人間の記憶や感情の一部を引き継いでおり、それぞれが深い業と悲しみを背負っています。
- ラスト(声優:佐藤ゆうこ):「色欲」の名を持つホムンクルス。伸縮自在の爪「最強の矛」を持つ。妖艶な美女の姿をしている。
- グラトニー(声優:高戸靖広):「暴食」の名を持つホムンクルス。何でも見境なく喰らい尽くす。子供のような知能を持つ。
- エンヴィー(声優:山口眞弓):「嫉妬」の名を持つホムンクルス。自由自在に姿を変える変身能力を持つ。人間を嘲笑し、弄ぶことを楽しむ。エドとの因縁が深い。
- グリード(声優:諏訪部順一):「強欲」の名を持つホムンクルス。炭素の硬度を自在に操る「最強の盾」を持つ。自身の欲望に忠実。
- スロウス(声優:鷹森淑乃):「怠惰」の名を持つホムンクルス。旧ハガレンでは、エルリック兄弟が人体錬成した母親トリシャが元になっているという衝撃的な設定。水を自在に操る。
- ラース(声優:水樹奈々):「憤怒」の名を持つホムンクルス。旧ハガレン完全オリジナルキャラクター。エドが人体錬成で失った右腕と左脚から生まれた存在。錬金術を使うことができる。
- プライド(声優:柴田秀勝):「傲慢」の名を持つホムンクルス。旧ハガレンでは、アメストリス国の大総統キング・ブラッドレイその人。「最強の眼」を持つ。
ダンテ(声優:杉山佳寿子) - オリジナルストーリーの鍵を握る黒幕
旧ハガレンのオリジナルキャラクターであり、物語後半における全ての黒幕。表向きは元国家錬金術師イズミ・カーティスの師匠として登場するが、その正体は400年以上も生き続ける錬金術師。かつてホーエンハイムの恋人であり、彼と共に賢者の石(不完全)を作り出し、魂を移し替えることで生き長らえてきた。死を極端に恐れ、完全な賢者の石を求め、ホムンクルスたちを裏で操り、エルリック兄弟を利用しようと画策する。杉山佳寿子さんの、慈愛に満ちた声から冷酷な本性を覗かせる演技は圧巻です。

オリジナルストーリー:原作とは異なるもう一つの「ハガレン」
旧ハガレン(2003年版)を語る上で最も重要な要素、それは物語中盤(具体的には第五研究所の調査あたりから)以降、原作漫画とは全く異なる独自のストーリーが展開される点です。放送当時、原作漫画がまだ連載中であり、結末も定まっていなかったため、アニメスタッフは原作者・荒川弘先生の初期構想やアイデアを元にしつつも、大胆なオリジナル設定とストーリーラインを構築しました。この決断が、旧ハガレンを単なる原作のなぞりではない、独立した魅力を持つ作品へと昇華させたのです。
原作との主な相違点
旧ハガレンのオリジナルストーリーは、原作と比較してよりダークでシリアス、そしてビターな雰囲気が色濃く漂っています。等価交換の原則の解釈や、生と死、魂の在り方といったテーマを、より深く、時に残酷に問いかけてきます。
- ホムンクルスの設定と起源: 前述の通り、原作ではホムンクルスは「お父様」と呼ばれる存在によって七つの大罪を分割されて生み出された人造人間ですが、旧ハガレンでは「人体錬成の失敗によって生まれた、元の人間の出来損ない」とされています。この設定変更により、ホムンクルスたちは単なる悪役ではなく、人間になりたい、あるいは人間であった頃の記憶に苦しむ、悲劇的な存在として描かれています。例えば、スロウスがエルリック兄弟の母から生まれた存在であるという設定は、兄弟に大きな葛藤をもたらします。
- 黒幕の存在と目的: 原作の壮大な計画を持つ「お父様」に対し、旧ハガレンの黒幕は、ホーエンハイムの元恋人であり、死を恐れ永遠の命を渇望する錬金術師「ダンテ」です。彼女の目的は、より個人的で、人間的な欲望に基づいています。この違いが、物語全体の雰囲気や結末の方向性を大きく変えています。
- オリジナルキャラクター「ラース」の登場: エドが失った手足から生まれたホムンクルス「ラース」は、旧ハガレンのオリジナルストーリーを象徴するキャラクターです。彼はエドと同じように錬金術を使うことができ、自身の存在意義や母親(ラースにとってはイズミ)への思慕に苦悩します。彼の存在は、エルリック兄弟の罪と、命の定義を問いかける重要な役割を担っています。
- 「門」と「等価交換」の解釈、そして衝撃の結末: 物語の核心である「門」や「真理」の概念、そして錬金術の基本原則「等価交換」の解釈が原作とは異なります。特に、旧ハガレンでは「門」の向こう側が我々の住む「現実世界」であると設定されており、最終的にエドが代償としてその現実世界へ飛ばされるという結末は、原作とは全く異なる、非常に衝撃的で議論を呼ぶものでした。
- キャラクターの運命の変化: 主要キャラクターを含む一部の登場人物の生死や、物語における役割、運命が原作とは大きく異なります。例えば、人気キャラクターであるマース・ヒューズ中佐(当時)の死のタイミングや、殺害した犯人が原作とは異なる(旧ハガレンではエンヴィーではなくラストとされている描写がある)など、物語の展開に大きな影響を与える変更点が随所に見られます。スカーの扱いや最終的な立ち位置も異なります。
この大胆なオリジナルストーリーは、放送当時、原作ファンを中心に賛否両論を巻き起こしました。しかし、原作とは違うからこその重厚なドラマ性、予測不可能な展開、そして心に深く突き刺さるビターな結末は、間違いなく旧ハガレン独自の魅力であり、多くのファンを惹きつけてやまない理由となっています。「もしもハガレンがこういう結末を迎えていたら」という、もう一つの可能性を示した、価値あるアナザーストーリーと言えるでしょう。
2009年版との違いについての詳しい記事はこちら⇩
FULLMETAL ALCHEMIST(2009年版)についての詳しい記事はこちら⇩
主題歌
旧ハガレンは、その音楽面においても非常に高い評価を受けています。物語の世界観や登場人物たちの心情を見事に表現したオープニング・エンディングテーマは、アニメソングの枠を超えて多くの音楽ファンに愛され、今でもカラオケの人気曲として歌い継がれています。
オープニングテーマ (OP) - 旅立ちと激化する戦い
- OP1:「メリッサ」/ ポルノグラフィティ (第2話 - 第13話): 疾走感あふれるメロディと、失ったものを取り戻そうとする切ない歌詞が、エルリック兄弟の旅の始まりと決意を象徴しています。旧ハガレンを代表する一曲。
- OP2:「READY STEADY GO」/ L'Arc〜en〜Ciel (第14話 - 第25話): エネルギッシュでロックなサウンドが、物語が本格的に動き出し、戦いが激化していく様を表現。高揚感と勢いを感じさせます。
- OP3:「UNDO」/ COOL JOKE (第26話 - 第41話): 物語がシリアスな展開へと向かう中、過去への後悔や元に戻したいという切実な願いが込められた楽曲。メロディアスながらもどこか影を感じさせます。
- OP4:「リライト」/ ASIAN KUNG-FU GENERATION (第42話 - 第51話): 物語がクライマックスへと突き進む中、運命に抗い、未来を書き換えようとする強い意志を感じさせる力強いロックナンバー。終盤の怒涛の展開を象徴する楽曲として絶大な人気を誇ります。
エンディングテーマ (ED) - 悲しみと希望の旋律
- ED1:「消せない罪」/ 北出菜奈 (第2話 - 第13話): 兄弟が背負った罪と、それでも前へ進もうとする悲壮な覚悟を感じさせる、ダークで美しい楽曲。北出菜奈の儚げな歌声が印象的。
- ED2:「扉の向こうへ」/ Yellow Generation (第14話 - 第25話): タイトル通り、「門」や未知の世界への探求心を歌った楽曲。希望と不安が入り混じる、ミステリアスな雰囲気を醸し出します。
- ED3:「Motherland」/ Crystal Kay (第26話 - 第41話): 壮大で感動的なバラード。故郷や母への想い、そして兄弟の絆の深さを歌い上げ、多くの視聴者の涙を誘いました。
- ED4:「I Will」/ Sowelu (第42話 - 第50話): 物語の終盤、別れや困難に直面しながらも、強い意志を持って未来へ進もうとする決意を歌った、力強くも切ないバラード。
これらの楽曲は、単なるタイアップに留まらず、歌詞やメロディが旧ハガレンの物語と深くリンクしており、作品全体の感動をより一層高めています。音楽を聴くだけで、アニメの名場面が蘇ってくるというファンも少なくないでしょう。
最終回:衝撃と感動、そして劇場版へ続く結末
旧ハガレンの最終回(第51話「ミュンヘン1921」※放送時のタイトル。DVD収録時や配信サービスによっては「法則と約束」などの副題に変更されている場合あり)は、それまでの伏線を回収しつつも、多くの視聴者の予想を裏切る、極めて衝撃的でビターな結末を迎えました。ハッピーエンドを期待していた視聴者にとっては、あまりにも切なく、やるせない幕引きだったかもしれません。
最終回の主な出来事
- エドワード vs エンヴィー、そして死: 物語のクライマックス。セントラル地下深く、ホムンクルスたちの本拠地で、エドは宿敵エンヴィーと最後の戦いを繰り広げます。激闘の末、エンヴィーの凶刃によってエドは命を落とします。主人公の死という、衝撃的な展開です。
- アルフォンスの犠牲とエドの蘇生: 兄の死を目の当たりにしたアルは、残された賢者の石(スカーから託された不完全なもの)と自身の魂全てを代価に、禁忌の人体錬成を敢行。門の向こうにあったエドの肉体と魂を錬成し、兄を蘇生させます。しかし、その代償としてアル自身は完全に消滅してしまいます。
- エドワードの決断とアルの復活: 蘇生したエドは、弟の犠牲を知り、今度は自身が弟を取り戻すために人体錬成に挑みます。自身の「門」そのもの、錬金術の能力、そして旅の記憶の一部という、錬金術師としての全てを捧げる覚悟で錬成を行います。その結果、アルフォンスは失った肉体(10歳相当の身体)を取り戻し、現世に復活します。しかし、記憶は一部失われている状態でした。
- 門の向こうへ - 異世界への旅立ち: アルを蘇生させるための巨大な代償を支払ったエドは、等価交換の法則により、「門」の向こう側へと弾き飛ばされます。そこは錬金術が存在しない、我々の知る現実世界。時代は第一次世界大戦後のドイツ、1923年のミュンヘンでした。そして驚くべきことに、そこには同じく門の向こうに飛ばされていた父、ヴァン・ホーエンハイムの姿もありました。
- 再会と、それぞれの世界での決意: エドは父ホーエンハイムと再会。元の世界(アメストリス)へ戻ることは不可能に近いと悟り、父と共にこの異世界(現実世界)で生きていくことを決意します。一方、元の世界では、肉体を取り戻したアルが、兄エドワードの帰りを信じて待ち続けることを決意。兄弟は、異なる次元で、互いを想いながらそれぞれの道を歩み始めることになります。ラストシーンでは、現実世界でロケット工学に興味を持つエドの姿と、元の世界で兄を探す旅に出るアルの姿が描かれ、物語は幕を閉じます。
この最終回は、決して単純なハッピーエンドではありません。兄弟は再会できず、エドは故郷にもウィンリィのもとにも帰れない。そのビターな結末は、放送当時大きな議論を呼び、賛否両論が巻き起こりました。「救いがない」「悲しすぎる」という意見もあれば、「深みがある」「余韻が残る」といった肯定的な意見もありました。しかし、この一筋縄ではいかない結末こそが、旧ハガレンという作品の持つ独自性であり、深い問いかけを視聴者に投げかける要素でもあったのです。そして何より、この結末があったからこそ、その後の二つの世界を描く**劇場版「鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」**という、壮大な物語へと繋がっていく必要不可欠なステップとなったのです。
まとめ
色褪せない魅力を持つ、もう一つの「鋼の錬金術師」
2003年版アニメ「鋼の錬金術師」(旧ハガレン)は、原作漫画や後のFA版とは異なる道を歩んだ、唯一無二の魅力を持つ作品です。その特徴を改めてまとめると…
- 衝撃的な「エドの死」: 主人公が一度死亡し、兄弟の犠牲と代償を経て異世界へ飛ばされるという、極めてシリアスでビターな展開。
- 深みのあるオリジナルストーリー: 人体錬成の失敗から生まれたホムンクルス、黒幕ダンテ、オリジナルキャラクターのラースなど、独自の設定が光る。原作とは異なるテーマ性(特に生と死、魂の在り方)を深く掘り下げている。
- 豪華声優陣による熱演: 朴璐美さん、釘宮理恵さんをはじめとする声優陣の魂のこもった演技が、キャラクターに命を吹き込んでいる。
- 心に残る珠玉の主題歌: ポルノグラフィティ、L'Arc〜en〜Ciel、ASIAN KUNG-FU GENERATIONなど、豪華アーティストによる名曲が物語を彩る。
- 劇場版へと繋がる最終回: 賛否両論を呼んだビターな結末は、その後の物語を描く劇場版への重要な布石となっている。
原作漫画やFA版が「王道」の面白さを持つとすれば、旧ハガレンは、よりダークで、哲学的、そして感傷的な魅力を持つ「もう一つのハガレン」と言えるでしょう。原作やFA版を観たという方にも、ぜひ一度、この旧ハガレンの世界に触れていただきたいです。その独特な雰囲気、重厚な人間ドラマ、そしてエルリック兄弟が辿る過酷な運命の旅路に、きっと心を強く揺さぶられ、新たな発見と感動を得られるはずです。未視聴の方はもちろん、かつて夢中になった方も、この機会にぜひ、旧ハガレンの世界を再訪してみてはいかがでしょうか。
更新日: 2025-04-26